ー運命の日
千葉県 某所TVスタジオ…
渡部「ほんとうに良かったのか?巻き込んでしまって…」
渡部は厳粛な面持ちで、隣に佇んでいた相方にそう、投げかけた。
児島「何を水臭い事を、何年来の付き合いだと思ってる?」
互いに走り抜けた20年、不思議と、両者の間にあった不和は取り払われ、まるで学生時代に戻ったかのような、穏やかな空気が流れていた。
児島「今日で最後になるかもしれないだろ、だからこそ、最後までコンビでいたいんだ」
そう答えた児島の顔には、諦観とは違った、強い決意のようなものが浮かんでいる。
渡部「……すまない」
児島「よせよ、さあ、俺たちの久しぶりの大舞台だ!しっかりやろうぜ」
AD「それでは、これより白黒アンジャッシュの収録を始めさせていただきます」
ADがそう告げると、一斉に照明が落ち、会場は暗転に包まれた。
一同「!?」
予想外の演出におののく観覧客たち。
??「巧みな技で意外な展開を作るのはこの二人ー」
どこかで聞いたようなアナウンスが流れ、やがて二人が姿を現した……
渡部「おー、ここが今日の謝罪会見の会場かー……しかしあんな事があった六本木ヒルズが会場とは…皮肉なもんだな…でも、そんなことも言ってられない。国民の皆様に、一所懸命誠意を伝えなきゃな」
渡部「さて、会見前に弁護士の人と打ち合わせすることになってるんだけど……」
(女装した)児島「芸人の渡部健さんにDM送ったら会ってもらえる事になっちゃった…大分前の約束だけど覚えてくれてるかなー…」
渡部「あ、どうも」
児島「あ、どうも初めまして」
渡部「あの、今日お約束してた…」
児島「はい、児島って言います」
渡部「今日はよろしくお願いします」
児島「いえ、こちらこそ」
児島(やだ…やっぱりテレビで見るよりかっこいい、手が早いって噂だから、絶対にモノにして見せるわ…)
渡部(ずいぶん若い弁護士さんだな…しっかり打ち合わせしておかないと…)
渡部「それじゃ早速始めましょうか」
児島「え、ここでいきなりですか!?」
渡部「いや…そんな驚かなくても」
児島「せめて違う場所で…あそこの多目的トイレなんてどうです?」
渡部「いやダメでしょ!?今一番ダメな場所でしょ」
児島「え、そうなんですか?」
渡部「どうしてこのタイミングで多目的トイレなんですか」
児島「そうですか…」
児島(あれー?おかしいな…手が早いって噂だったんだけど…)
渡部(おいおい、この弁護士さん大丈夫かよ…?)
渡部「そうだ、今日なんですけど、僕こういった事はじめてで、どんな格好していけばいいか分からなくて…」
児島「格好ですか?」
渡部「はい、例えばスーツでいいのか、ネクタイはどうすれば…とか…」
児島「うーん…なんだっていいんじゃないですか?どうせ最終的には下半身裸になるんだし…」
渡部「裸!?え、下半身裸になるの今日俺!?」
児島「そりゃそうですよ」
渡部「いや、おかしいでしょいくら何でも!見たことないですよ下半身裸になるやつ!」
児島「うーん、じゃあチャックからチ〇チンだけ出します?」
渡部「ド変態じゃねーかよ!」
児島「え、そうですか?」
渡部「冗談じゃないですよ、そんなもの収録されたら一環の終わりですよ!」
児島「え、収録するんですか!?」
渡部「そりゃしますよ、全国民に見てもらわないと」
児島「国民全員に!?どういう趣味してるんですかちょっと!?」
渡部「いや趣味も何も…」
児島「ちょっともう私帰らせてもらいます!」
渡部「ええ!?」
児島「ほんと撮影とか無理なんで」
渡部「ええ…ちょっと…困りますよ!」
そこで違うもう一人の男性が現れる
男性「あの、渡部さんですか?」
渡部「ああ、えと、はい」
男性「今日お約束頂いた弁護士のものです」
渡部(ああ、なんだ。どうりで若い弁護士だと思った…二人付けてくれてたんだ…)
渡部「児島さん!」
児島「はい?」
渡部「じゃあこれから、3人で(打ち合わせ)やりましょう」
児島「する訳ないでしょ!!」
おわり
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